生活保護者向けのアパート経営はアリかナシか?結論:アリです。
こんにちは。2代目大家のジューニョです。
このサイトではアパートやマンションの賃貸経営を相続した大家さん向けに、満室経営のためのノウハウを発信しています。
生活保護者の受け入れってやめた方がいい?
トラブルが多そうで嫌だなあ。
受け入れるメリットある?
うまく運営するための注意点やコツが知りたい。
今回はこのような不安や疑問を解決しちゃいます!
- 本記事でお伝えしたいこと
- 生活保護者の受け入はアリ。ただしコツが必要
- 実は受け入れには結構メリットがある
- デメリットや実録トラブルも紹介
- 生活保護者を受け入れるなら絶対やって!トラブル回避のコツ
僕が大家業を継いだ時、全物件約40戸の入居率は90%以下でした。常に5戸前後は空室。
様々な空室対策の結果、満室を達成。年間通して入居率98%以上を維持しています。物件も増やして年間家賃収入は4,000万円から5,500万円に増やすことができました。
さて、生活保護者を受け入れるのって不安がありますよね。
入居自体をNGにしている大家さんも多いはず。
今回は、以前生活保護者向けの築古アパートを運営していたので、当時の実体験をもとに実録トラブルや受け入れのメリットについて解説します。
計4年間運営していましたが、大きなトラブルが起きることはありませんでした。(小さいのはちょこちょこありましたが)
これをやらないと失敗しちゃうかも、という生活保護者向けアパート経営のコツもまとめましたのでご参考まで。
それではどうぞ!
・大手不動産ポータルサイトのwebプロデューサーを約12年
・不動産会社の代表取締役
・賃貸アパート・マンション・ビルの2代目大家
・年間家賃収入は約5,500万円
・宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士
生活保護者の受け入れはアリ。ただしコツが必要です。
生活保護者向けのアパートを運営していた僕の経験からすると、生活保護者の受け入れはアリ。
ただし運営にはコツが必須です。
何の知識も準備もなく受け入れると後悔します。
まずはアパート経営で生活保護者を受け入れるメリットを5つ紹介します。(意外とメリット多いです)
- 入居率が上がる
- 長期入居の可能性が高い
- 家賃の滞納リスクが低い
- 家賃交渉されにくい
- ケースワーカーに相談できる
一つずつ解説します。
メリット①入居率があがる
厚生労働省の発表によると、生活保護受給者の数は令和4年3月時点で、約203万人、世帯数は164万世帯。
アパート経営においても、生活保護受給者は無視できない数と規模になってきています。
※参照「生活保護制度の現状について – 厚生労働省」
これだけの、言ってみれば「入居見込み顧客」がいるのに、生活保護者の受け入れをNGにしている大家さんは多いです。
つまり生活保護者を受け入れるということは、他の大家さんたちにはない差別化ポイントができるということ。
結果、ライバル物件が少ないので入居率が上がるというわけ。
なお、入居者募集の際は、生活保護の仲介実績のある不動産会社に依頼をしましょう。
生活保護者の契約は役所がからむ関係で1か月程度かかることが多いのもあり、管理会社や不動産会社によっては嫌がられたり全く入居が決まらなかったりします。
首都圏なら以下の仲介会社が実績あるみたいですよ。
メリット②長期入居の可能性が高い
2つめのメリットはこれ。
生活保護者は一度入居すると長く住んでいただける場合が多いです。
僕の場合、5戸すべてが生活保護者でしたが4年間退去は一件もありませんでした。
なぜか。
簡単に引っ越すことができないからです。
その理由は以下。
- やむを得ない理由以外は引っ越し費用が自費になる
生活保護者の方々も引越し自体は基本的に自由なのですが、引っ越す場合は役所の福祉事務所の担当ケースワーカーに許可をもらう必要があります。
「ペットを飼いたい」「広い部屋に住みたい」「もっと家賃の高い部屋に住みたい」などの贅沢を求めて引越しする理由だと許可されないようです。
自己都合で引越しをする場合、生活保護法にある16の条件(立ち退きや身体障害などのやむを得ない理由)のいずれかに該当しないと、引越し費用や退去費用は自費になります。
なかなか自費で出すのは厳しい方が多いんじゃないでしょうか。
- 大家さんや不動産会社から入居を断られるケースが多い
上でも書きましたが、生活保護者を入居NGにしている大家さんが少なくないですし、契約に時間がかかる上に仲介手数料が安いので不動産会社も仲介を嫌がる場合があります。
つまり、引越し先がなかなか見つからない、ということです。
というわけで、
- やむを得ない理由以外は引っ越し費用が自費になる
- 大家さんや不動産会社から入居を断られるケースが多い
以上の理由から、結果的に生活保護者は長期的な入居者となるメリットがあるのです。
メリット③家賃の滞納リスクが低い。※ただし働いて収入が増えた時は注意
続いて3つめメリット。
生活保護というと家賃滞納のイメージがあるのではないでしょうか?
実は自治体の福祉事務所が家賃を直接振り込んでくれる「代理納付」という制度があるので、それを利用すれば家賃滞納リスクはなくなるんです。
家賃滞納は賃貸経営の大きなリスクの一つですから、これだけでも大きなメリットですよね。
また、代理納付を利用せず生活保護者から直接振込の場合でも、支給された家賃を振り込まず使い込んでしまったりすると生活保護の受給が打ち切りになります。
ただし。
入居開始時は生活保護だったけど働いて収入が一定以上増えると生活保護が打ち切り(というか卒業?)になる場合があります。
受給がなくなった場合、本人からの直接振込になりますので注意が必要です。
僕の場合も働くようになって生活保護から外れた方がいらっしゃいましたが、ちゃんと毎月振り込んでいただけていました。
メリット④家賃交渉されにくい
この記事を読んでいる大家の皆さんは、入居者から家賃の減額交渉を受けたことはありますか?
生活保護者の場合、家賃は税金によってまかなわれているので家賃の減額交渉を行うことはあまりありません。
長く住んでいても家賃減額交渉がほぼないというのもメリットの一つです。
メリット⑤ケースワーカーに相談できる
住民とのトラブルがあった際、普通は管理会社と相談しますよね。
生活保護者の場合は、自治体の福祉事務所に担当のケースワーカーがつきます。
僕のアパートは5名全員が同じケースワーカーの方が担当でした。
ケースワーカーは担当する生活保護者と定期的に面談していたりするので、生活に関する情報を把握できています。
何かトラブルがあったりした場合はオーナーも相談ができます。
僕の場合、福祉事務所が近かったので何度かケースワーカーの方と情報共有をしに会いに行きましたよ。
生活保護者を受け入れるデメリットや実録トラブル
メリットもありますが、生活保護者の受け入れには当然デメリットもあります。
僕が実体験したトラブルも併せて説明します。
- 近隣トラブル
- 家賃滞納
- 孤独死
デメリットも一つずつ解説します。
デメリット①近隣トラブル
生活保護者は何らかの理由で働くことが難しかったり収入が低い場合が多いです。中には前科があったり精神障害や薬物依存の方もいます。
働いていないと日中は家にいることが多くなりがちですので生活音でトラブルになったり、生活保護者ではない入居者も同じアパート内に入居している場合、嫌がれたりすることもあります。
もちろん生活保護から脱出しようと必死で努力しようとしている方もいらっしゃいますし、ほとんどはトラブルを起こすような方ではありません。
僕の場合、1棟丸ごと生活保護者向けのアパートだったのでアパート内での近隣トラブルは一度もありませんでした。
唯一あったのは、ゴミの集積所がアパート前だったのですが管理のことで近隣の方からクレームが入って告知をしたぐらいですね。
デメリット②家賃滞納
家賃の滞納リスクは低いとはいえゼロではないです。
自治体からの代理納付制度でリスクを下げることはできますが、働いていて収入がある場合は住宅扶助が満額支給されないこともありますので、代理納付でも家賃の一部が本人から直接支払いとなり、滞納となる可能性もあります。
デメリット③孤独死
大家さんにとってはこれが一番のリスクかもしれません。
平成27年から生活保護者の人数や世帯数は減少しているものの、高齢者世帯は増加していて令和4年現在で全体の約56%が高齢者世帯(65歳以上)です。
仮に亡くなって発見までに時間が経過した場合、特殊清掃費用が生じたり事故物件となって成約しずらくなったり、家賃が下がったりする可能性があります。
また、親族の方などが対応していただけばまだ良いのですが、中には対応を拒否されたりする場合もあります。
生活保護者受け入れるなら必須!トラブル回避のための運営のコツ
生活保護者を受け入れるメリットとデメリット、想定できるトラブルを把握した上で、最後は生活保護者を受け入れる場合のトラブル回避のコツを紹介します。
僕は全て実践しました。以下は必ずやりましょう。
- 代理納付を利用しよう
- 家賃保証会社を利用しよう
- 入居者の審査をしっかり行う
あと、場合によって以下もおすすめです。
- 定期借家契約
- 孤独死保険
代理納付を利用しよう
家賃滞納のリスクをゼロに近付けるために代理納付は必ずやりましょう。
自治体の福祉事務所に問い合わせれば、必ず担当のケースワーカーがいますので対応してくれます。
※自治体によっては代理納付がない場合アリ
≫東京都の福祉事務所一覧はコチラ
東京都福祉保健局-福祉事務所一覧
家賃保証会社を利用しよう
代理納付をしていても保証会社は入居の必須条件にしましょう。
上でも書いた通り、生活保護者が引越しする頻度は高くありませんが、引っ越し費用や退去時の原状回復費用は補助費では出ないので自費での負担になります。
引っ越す必要があるけど、原状回復費用が高くて支払えない、なんてことも。
保証会社の保証内容は家賃滞納だけではなく、訴訟費用、残置物処理費用、原状回復費用も保証してくれる場合があるんです。
ちなみに保証会社の費用も生活保護費の支給に含まれるので、必須条件にしても成約しずらくなるということはないかと。
ただし注意点。
賃料保証の限度額は会社によって異なります。また、訴訟費用や原状回復費用が保証範囲に含まれないことも。
いざトラブルがあった時に「こんなはずじゃなかった」とならないように、契約時には保証会社の保証範囲をしっかりと確認するようにしましょう。
入居者の審査をしっかり行う
生活保護者でなくても入居時の審査はしっかりと行うべきですが、生活保護者の場合は特に厳しく審査する必要があります。
代理納付で家賃滞納リスクは限りなくゼロにしたとしても、生活保護者の方は生活が荒れていたり、性格に難ありの方がどうしても多くなります。
トラブルが起こるかどうかは審査にかかっているといっても過言ではないです。
通常は仲介会社が直接会って対応するので、入居者の人柄や応対態度を報告してくれますが、僕の経験上だと客付けの仲介会社の場合はあんまりあてになりません。
担当した営業マンの経験値に左右されてしまうからです。
僕の場合は管理会社の担当が業界歴が長く、はっきりとモノを言うタイプ(しかも強めに)なので、その人が審査した場合は信頼してますが、これを読んでいただいている大家の皆さんの管理会社もそうだとは限りません。
その場合はどうするか?
担当のケースワーカーに「生活保護の受給理由」を聞いてみましょう。
担当者によっては何も教えてくれない場合もありますが、転居先が決まらないと困るのは担当しているケースワーカーも同じはず。
高齢で就職できない、ケガで働けない、など理由は色々ありますが、トラブルになりやすい精神疾患の場合は要注意です。
トラブルがあった時に寄り添ってくれる親族の方などがいれば良いですが、そうでない場合は避けた方が良いかもしれません。
必須ではないですが、トラブル回避のために以下の方法を活用するのもオススメです。
定期借家契約の活用
審査もしっかりして入居しても大丈夫だと思ったけど、トラブル続きでやっぱり出ていってもらいたい。
生活保護者かどうかに関わらず、大家業をやっているとそういうことも少なからずありますよね。
しかし現状の借地借家法は、借主保護の観点が強いので、特段の事情がない限り大家さんから一方的に契約解除を求めることはできません。
そこで定期借家契約の活用です。
定期借家契約は契約期間が決められている賃貸借契約。
契約の更新がないので契約期間が満了すると借主は退去しなくてはなりません。
貸主と借主の双方が合意すれば、期間満了後の再契約もできますので、生活保護者を受け入れるのがちょっと不安だなと思ったら定期借家契約で契約するのもアリですよ。
孤独死保険の活用
家賃保証会社を利用することは上で書きましたが、生活保護の入居者が高齢だったりする場合は、孤独死保険を扱う家賃保証会社をおすすめします。
会社によって、また、保険料の負担が大家さんか入居者か、によって保障内容が異なりますので、比較検討した上で活用すると良いと思います。
まとめ
本記事では、以下の内容について解説しました。
- 生活保護者の受け入はアリ。ただしコツが必要
- 受け入れには結構メリットがある
- デメリットや実録トラブルも紹介
- 生活保護者を受け入れるなら絶対やって!トラブル回避のコツ
アパート経営において生活保護者を受け入れることはデメリットもあります。
トラブルが起きる確率もちょっとは高いかもしれません。
しかし、生活保護から抜け出そうと必死に努力している方もたくさんいます。
大家としては、そんな方々を生活保護だからと一緒くたにせず手を差し伸べるべきだと思います。
さらに賃貸経営という事業として考えた場合、他の大家さんがデメリットだと思うことをデメリットにならないように工夫し、差別化することが重要ではないでしょうか。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
ではまた。
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